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かながわ定食紀行おかわりかながわ定食紀行おかわり【⇒amazon】
著者:今 柊二
価格:798円(税込)
かもめ文庫 神奈川新聞社

今年の頭に読み始めてソッコー読了しているのだが、ブログにUPするタイミングを逸したまま今日を迎えてしまった。
本を取り上げた記事は5月のミニコミ誌『HB』以来だが【該当記事:HBというミニコミ雑誌について】、実は本著の記事を書く前フリ的な意味合いもあって『HB』に触れたのだが、その時も色々あってUPできずじまい。
でもまぁ、そんな勿体ぶった記事じゃないんスよ、これから書くことは(著者に失礼!)。本著同様、気軽な話。

かながわ定食紀行タイトルに「おかわり」とあるように、本著は『かながわ定食紀行』【過去記事】の続編となる。そもそもの連載が神奈川新聞の日曜版とあって、神奈川県内の定食屋さんの紹介記事をまとめたものとあって、まぁそう堅苦しい文章ではない。原則、淡々と町場の定食屋が羅列されるのみだが、神奈川には殆ど縁のない自分でも十分に楽しめる。
自分もB級グルメ&町歩きのミニコミをやってて思うのだが、取り扱うエリアが居住もしくは在勤でないと、途端に手にとってもらえなくなるというのは、即売会で売り子をしていて直接読者の反応を目の当たりにしていると、露骨な反応として返ってくる。なんで川一つ、区境1コ跨ぐだけで興味が削がれるのか、コチラが町として優れてて、アチラが劣ってるなんてことは何一つない。一つ駅が違うだけで、新たな違った顔が、大変興味深い風景が待っていてくれるものだと思うのだが。まぁその町毎の魅力をプレゼンテーションしきれていない自分の腕のなさが一番の要因なのだろうが。
だから、自分が行ったことのない町にどんな特徴や魅力があるのか、とても興味がある。人生、いつ何時どの町とどんな巡り合わせがあるか、わかったもんじゃない。一生縁のないと思っていた駅に仕事でよく向かうようになった、なんてことはよくあるんじゃないだろうか。本著にある洋食屋や中華屋、とんかつ屋は、それぞれの駅の近くに当たり前にある、地域密着型のなんてことのない店ばかりだ。ここに、こだわりも特別な素材も売切れ次第終了もない。地域密着だからってご当地グルメもない。いやあるか、トルコライスが。前回に次いでトルコライスを追う記事が掲載されているが、それだって町おこし的に原っぱのテントで大量に作られたのをプラッチックの嫌に白い皿で食うのじゃなくて(そこに文化はねぇ!)、なんてことない店で昔から当たり前に供されている炒めもんと揚げもんを皿に乗っけた代物だ。
これが、著者の衒ったところがないフツーの読みやすい文章で綴られているのがまたいいのだ。いや、これが本当に難しいんだ。定食の連載だからどーしても書き方(構成・表現)がワンパターンになりやすい(このブログみたいにねww)。飽きさせないようにとか、変化つけるために、どーしても下心が出てくるもんなのだけど、そこを淡々とこなしながら、それでいてワンパターンとして飽きが来ることがない。そうだ、町の定食屋といっしょだ!
定食学入門 (ちくま新書)この本が出る間に、著者はこれまでの飲食店のレポート的な雰囲気とは異なる空気感をもった、『定食学入門』【過去記事】や『定食と文学』(こちらは未読)を著している。食にまつわる造詣の深さ、知識量には驚かされ、氏が名実ともに現在の定食オーソリティであるところを見せつけられた。その上で、改めてオーソドックスな切り口の定食紹介文を読むと、そうした知識に裏打ちされつつも、それをひけらかさず、下駄履きの定食屋の良さそのままに文章を綴れるってのは、こりゃスゲーなと。
定食屋の記事の他に、うどんやお好み焼きをアテにご飯を食べる、つまり定食化することを力説する論考があるのだが、あれだけ定食論(?)をまとめ上げたのに、無駄に熱いというか、飲み屋で酔った勢いで西日本の食文化を関東人に力説するテンションなのがおかしい。もちろん背景に知識があるから、酔っぱらいの説教のいい加減さはないのだが、それでも、本著は本著のノリとして、書き分けられている。まぁ個人的に、関東人ながら炭水化物×炭水化物でも全然OK、寧ろウエルカムな人間としては、ウンウン頷きながら読めたってのがデカいのだけど(たまに当ブログで述べる隠れ四国人説の話もあるが)。
この辺の書き分け方、氏の持つ定食への目線の低さが、巻末の対談だと顕著に露呈する。前作も対談があって同じように思ったが、前回の唐沢俊一や今回のおでん研究家なんかだと、自分のテリトリーに話を持ってっちゃうから、定食の定食たる部分と俄にずれて行ってしまう。藤木TDCとでさえそういう部分がある。その齟齬というか乖離が、却って氏のポジションを浮き彫りにさせて(気ぃ遣ってる部分とかw)面白かったりするんだけど。
立ちそば大全定食以外にも立ちそばの本【過去記事:立ちそば大全】も著しているが、それらとこの神奈川の定食本がビミョ〜に違う点は、氏が若かりし日に白楽に住んでいたコラムをみてもわかるように、前回にも学生の頃に通った横浜の話もあったが、普段の生活の中に当たり前に定食屋で食していた経験、そしてその思い入れが深いところにあるのではないだろうか。なんでもない生活の中で食べた定食、そこで触れた町の空気感。それがホンチョの全体に流れている気がしてならない。その風に誘われて、所用のついでにでもフラっと立ち寄りたくなってしまう本といえよう。やっぱねぇ、本作るために好きでもないもん罰ゲーム的に食ったり、B級グルメブーム貶し前提で遠征したレポートなんかとはもう質がじぇんじぇん違うのだよ…ってそれはもういいって(笑)。

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