カテゴリ:温泉・銭湯 > 温泉地・立ち寄り湯

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この数日続いている集中豪雨。特に九州では河川の氾濫が相次ぎ、名温泉地が打撃を受けている。
熊本の人吉に続いて、2年前にお邪魔した日田の天ヶ瀬も大きなダメージを受けた。

温泉街は玖珠川に沿って続いており、温泉旅館が並ぶ道からスグに河原に降りることが出来、気軽に点在する露天の共同浴場に入れる。
山をバックに流れる川を眺める最高のロケーションで、かけ流しの濃い温泉に浸かれる幸せ。
それが叶わぬ状態になったのは、今回が初めてではない。
2017年の九州北部豪雨でも打撃を受けており、川に沿って走るJR久大本線は線路が分散され、一部区間が普及になり、観光資源である列車ゆふいんの森も走れない状態になった。

1年かけて2018年の夏に全線復旧して2年と経たない今、こうしてまた打撃を受けようとは。
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天ヶ瀬の温泉旅館の1Fが浸水し、玄関部分がグチャグチャになっている悲惨な映像をテレビで見ていたら、見覚えのある浴室が映し出された。
自分が泊まった日田旅館の風呂場だ。あの濃い温泉とその匂い、そして水槽のある独特な浴室は忘れもしない。
今後再開されるのか、今はそれどころではないのかもしれないが、天ヶ瀬温泉の現状と、今後、温泉街として再開されたとしたら皆さんに行ってほしいと思い、伺った際のことをレポしておこう。

正直あまりよく調べず、立地で決めたのだが、来てみて驚いた! 山間の渓流沿いに鄙びた温泉宿が軒を連ねており、河原には温泉が湧き、露天風呂がアチコチに点在しているではないか。まさに風呂入りたい放題。
外観
そんな中にある旅館日田屋という宿に泊まったのだが、たまたまじゃらんで部屋が空いてたからここに決めただけなのに、途轍もなく凄かった。

看板
旅館日田屋【じゃらん】
所在地:大分県日田市天瀬町桜竹362−1
採点:★★★★★★★★★★ 最&高

まるでつげ義春の漫画に出てくるような絵に描いたボロ宿(最高の褒め言葉です)。
室内
2Fに通された部屋には床の間があって、ちゃんと掛け軸もかかってる純和風。
床の間
その床の間に船の模型のようなものが飾られている。
床の間の模型
昭和の居間とかって、やたら提灯とか木彫りの熊とか土産物が飾ってあったよね。ガラスケースに入った人形とかもよく床の間に飾ってあったけど、そんなんを思い出させる。
部屋の畳もフニャフニャで全体に湿気っぽかったが、部屋の窓を開けると目の前に川がゴウゴウと音を立てて流れている。
玖珠川夜

速攻浴衣に着替え、まずは風呂だと廊下に出ると、宿全体が硫黄の匂いに包まれていて、浴室まで独特のいい匂いの中を進む。
館内
脱衣場は温泉地のお風呂場らしい簡素さ。
脱衣場
温泉の詳細も掲げられていた。
温泉分析表
さっと浴衣を脱いで浴室へ入ると、岩風呂には水槽があり鯉が泳いでいた(ここがテレビで見た浴槽)。
温泉
お湯は熱いので自分で水で埋めて調整して入るのだが、無色透明ながら泉質はバツグンによく、ヌメりとむせ返るような硫黄臭で、湯船にも大量の湯の花が浮いていた。
湯の花
これこれ、こういう温泉に入りたかったのだよ! 満喫。

風呂を上がって浴衣に着替え、この日の昼間に行った日田の酒蔵「薫長酒造」で買ったワンカップで乾杯。
イカ天とカップ酒
カップ酒開缶
アテは来る途中のヤマザキyショップで手に入れたイカの天ぷら。結構知られているが、九州ではさつま揚げを天ぷらと呼ぶ。
イカ天断面
さらに想夫恋のラスクも買っていたので、腹の足しにした。
ラスク
酔いが回るとともに、おもむろに敷いてあった布団の上に横になる。
室内布団
こんなダラダラ寝っ転がって過ごすの、学生の頃一人暮らししていた以来じゃないかな。

翌朝、窓を開けると玖珠川がはっきり見えた。
玖珠川朝
普段は川中の岩が見えるほどの浅さなんだな。対岸のホテルへと渡る赤い橋が、今回の豪雨で流れたもの。テレビでみて、うわぁ、あの橋か!と一瞬でこの光景が蘇った。
露天風呂
河原の露天風呂が2Fからよく見える。真っ裸で入ったら丸見えだな。
と言いつつ自分が入るわけだが、これはまた期を改めて。

ともあれ、こんな素敵スギル旅館と温泉のある街が、あのような事態に2度もなるとは。改めて日本の地形によって生まれた文化の恩恵を、今まで余り考えずに漫然と享受していたんだなと思い知らされた。
恒久なものなどないから(無常というものを痛感させられた)、今後温泉という自然の恵みと、そこから育まれた文化を、どう維持していくのか、楽しませてもらうことができるのか、考えないといけない時期に来ていると思った。
だからといって、私一人になにか出来るでもなく、アイデアもないのだけど、今回の災害で、人々が考える機会を与えられた気がしてならない。恐れ多くもその一助にこのブログ記事がなれたらいいなと。
というわけで、ホントいいお湯でした。

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ブログネタ
関東地方の温泉 に参加中!
気づけば3年ほど未UPのままだった風呂ネタをば。取っておきにも程があるか(^^ゞ

外観@浅草観音温泉浅草観音温泉【Wikipedia】
所在地:台東区浅草2-7-26
時間:10:00〜18:00
定休日:水曜(祝営業)
採点:★★★★★ 5.0
クチコミ:@nifty温泉(酷評の数々^^;)


浅草寺の西側。花やしきに程近い場所に怪しく蔦の絡まるビルが聳え立っている。「歌と踊りで今日も楽しく」と書かれた看板が出迎えてくれるココは、浅草観音温泉。
入口@浅草観音温泉
看板の文句から、健康ランド的大衆演芸が披露される宴会場も備わっているのかと思うが、見るからに健康ランドというより場末の温泉場の雰囲気だ。先の文句の上に「酒は大関」「男は黙ってサッポロビール」とあるが、酩酊してお風呂入っちゃダメだろ。

ロッカー@浅草観音温泉入ると番台というよりポルノ映画館のモギリのような衝立があり、中で婆さんが小さなテレビでメロドラマを見ている。700円と少々お高い入浴料を払うと、「タオル大丈夫」なんて気遣ってくれる。
英語の注意書きが多く、場所柄ガイジンも多いのだろうが、外人はこれがジャパニーズオンセンだと思い込まないだろうか。そもそもこの婆さんで相手できるのだろうか。なんだかそれでオールOKな気がしてきたが。
下足箱は木札の昔から銭湯にあるのと同様だが、立て付けがガタガタでロックされてるのかも怪しいほど。

さて男湯に向かおうとすると、目の前にムダに爽やかな壁画が。
ロビー壁画@浅草観音温泉
北見隆のイラストのような人々が幸せそうに暮らす図。この薄暗い空間ではただ恐怖でしかない。
廊下@浅草観音温泉
まるで川崎辺りの高架下のような薄暗い廊下を折れると、男湯女湯それぞれの入口が現れる。
男女入口@浅草観音温泉
千葉は津田沼の鷺沼温泉【参照サイト】という銭湯は相当ディープだったが、それを上回るディープさ。つげ義春の漫画の世界。
昔よくデパートの屋上や薬局の店先にあった、動物などのキャラクタで10円で動く乗り物があったが、ここにはバンビが茶けた姿で生き残っていた。
乗り物@浅草観音温泉
でも動かないそうだ。

脱衣場も場末の温泉場そのもの。
脱衣場@浅草観音温泉
奥に廃病院の手術台のようなベッドがあったが、マッサージ器具のようで、こちらも故障中とのこと。しかし見た目のくたびれ加減に反して掃除は行き届いており、ニスで異常なほどピカピカの床にはホコリ一つなかった。ジイサンが一人、超スローモーに着替えをしていたが、まぁ利用者が少ないからキレイさが保たれているのだろう。それでも競馬のある日は込み合うようで、万引きへの注意書きが目立つ。
浴場へ向かおうと扉を開けると、またもや目に壁画が飛び込んできた。
浴場@浅草観音温泉
人魚のタイル絵だ。ドットで描かれてるから色の違いで人物と風景を描き分けているのだが、なぜか胸だけ輪郭が存在する。女湯も同じだろうか。
カランがぶっ壊れている。いや故障しているのではない。カランがあっただろう場所の壁に穴が開き、壁の内部がむき出しになっているのだ。床はピカピカなのに壁は穴が開いたままというこのアンバランスさ。恐怖劇場か。
カランの湯も真っ直ぐに落ちてこないわで、なんとかかんとか身体を洗い、湯船に向かう。湯は無色透明で臭いもなく、何処が温泉だかわからない。湯船の底の錠剤からは泡々がブクブク立ち上がってるし(多分塩素剤)。
アツ湯とヌル湯に分かれていて、アツ湯には「VERYHOT」と書かれている。ぬる湯に入ったが、手を付けるとどっちもそんなに温度差はないようだが、アツ湯からは湯気がもうもうと立ち上がっている。
湯を出ると超ビミョウにヌメリがある気がした。若干温泉であると感じられる部分はあった。水道の沸かし湯とは違う気がして、湯上りの感覚は悪くない。

ともかくこの際、泉質がどうこうというのはどーでもよろしい。東京にこんなディープな場末温泉が存在し続けているという事実がもう驚愕としかいいようがない。これが700円で楽しめるのだ。安すぎる! 浅草に行ったら是非覚悟の上で立ち寄ってほしい。超オススメです! というわけで、サイコー!!いいお湯?でした!!!

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前回の続き

※今回は内容がないというか、まぁ場ツナギの余興みたいなもんなので、ざっくり流してください。スンマセン…

旧赤線を目にした後、その足で熱海駅までテクテク歩く。
駅の公衆電話から電話をかける。その先は箱根板橋にある「懐かし横丁」。昭和レトロなテーマパークというのもずいぶん増えたが、ここには駄菓子やコレクターグッズの他にレトロゲームコーナーがあり、ビデオゲームから10円玉を弾くゲームまで相当数揃っており、こっち方面へ出たときにはなんとしてもよってみたかったのだ。
しかし今日はまだ正月。開館しているかどうか確認しようとTELしたものの・・・誰も出ない。こういう事態も予測していたので、第二候補としてとっておいた湯河原の温泉を目指す。
後にわかることだが、熱海には「ふしぎな町1丁目」という、なかなかに奇天烈そうなテーマパークがあるようだし、伊東には「怪しい少年少女博物館」もあり(こっちはちと時間的にムリか)、これらを事前に知っていたらと悔やまれてならない。
※ふしぎな町1丁目は期間限定のため終了したとのこと。残念!

湯河原の日帰り温泉施設の候補は2つ。一つは年末年始で営業時間が短縮されていたので諦め、もうひとつに。こっちは湯河原と真鶴を繋ぐコミュニティバスが足となるのだが本数が少なく、いまからだと湯河原発では1時間以上待つことになるので、真鶴まで出ることに。
真鶴の駅はいかにも田舎の単線の一駅といった趣で、駅前ロータリーには観光案内所があり、コンビにはみえるものの、他は駅前食堂くらいなもので、あとは延々緑が広がっていた。
20分ほどでやってきたバスに乗り、本来ならば10分チョットでつくところ、ちょうど公園を一周するルートを通る時間帯のものに当たったため(山を切り開いた、公園を伴った新興宅地開発を行っているようで、その巨大な敷地を夕方とか特定の時間だけぐる〜っと一周するのだ。このエリアに用のない人間には「どこに連れて行かされるんだ!?」という光景が展開するというある意味貴重な体験が出来た)、倍近い時間をかけてやっと到着。

YT1凡そ日帰り温泉とは思えないほど、草木の手入れが行き届いた旅館というか料亭といった趣で、足元のスポットライトに顔を照らされながらフロントへ。前知識で1050円と聞いていて少々高いなぁと思っていたが、これは期待大!
受付で御年賀をもらっちゃったりして(ビニールバッグだけど)、男湯の暖簾をくぐると・・・あれ? ロッカーこれだけ? 奥にあるのかと探すが見当たらず。銭湯より狭い脱衣場。しかも隅っこに埃や髪の毛が溜まっている。後々もこまめに清掃員が出入りしている様子はなかった。
とりあえず着替えて洗い場へ・・・あれれ? 洗い場これだけ?? カランが6〜8つくらいしかない。近所のニイチャンみたいなので洗い場が埋まってしまっている。男湯でこれなのだから、女湯はオーバーフローおこしてるだろう。風呂だけに。
洗い場を背にするように、7〜8人はいればいっぱいな内風呂。露天以外の空間はこれだけ。いざ露天へ向かうとさすがに大きな露天風呂が出迎えてくれた。打たせ湯や洞窟風呂まであって、なかなか豪華である。結局多くの客は露天で温泉に浸かるのが目当てだから、こうしたつくりは正解なのかもしれない。にしても内風呂の空間は狭すぎだが。
ここの露天は高台に位置し海が一望できるというのがウリ。もう夜で海は拝めなかったが、あってないような目隠しの衝立なので、夜景が一望できた。これはなかなかの眺望で、火照った身体を夜景を眺めながら冷ませるというのはアイデアだと思う。
このようなシチュエーション、温泉に入りながらさぞ満足だろうと、お湯に浸かってみると・・・んんんん!? 入口に源泉100%とあったような?? なんでしょう、この湯気を伝って香るE素臭は!? 無色透明なのはいいが、肌に伝わる感触になんらの感じるものはない。熱めの湯なのだが、自宅で追い炊きしたような、刺さるような熱さがある。
まぁ自分は温泉博士でもないし、この臭いがここの温泉の特徴なのかもしれないし、この刺激も温泉効果のなせる業かもしれない。一介の似非温泉好きにわかるはずもない。だから、無責任なこと書いて、嘘を流布しかねないので、ここの施設名は伏せておく。ただ、素直な自分の感想として、温泉であろうとなかろうと、ここの湯で過す時間が快適でないことだけは確かだ。それに値段と施設自体のデキとがつりあっていないように思えるから余計だ。
予定を大幅に繰り上げ1本早いバスで湯河原を目指すことに決め、湯船を出た。ここは浴室の他に本格的な和食の食事処を併設しており、個室も予約でき、神奈川で初の飲泉もできるという。気分的に覗き見る気も失せてしまったが、外からはこの食事処が結構面積をとっているように思える。いろいろ事情があろうが、浴室に比重を当てられなかったのかと疑念を抱かずにはいられない。
YT2帰りしな、一応外観の写真を撮ったが、看板が光って文字が消えてしまっていて本当によかった。
バスの車中、自宅でプリントアウトしてきたこの施設のMAPをふと取り出してみて思い出した。これを見せれば1割引だったのだ。セコい話だが、せめてもう少しでも安く入るんだった…

湯河原について時刻表を見ると次の電車までちょっと時間があったので、駅前の観光案内図から、もうひとつの候補だった立ち寄り湯の場所を確認してみた。すると、もし時間ができたら寄ろうと思っていた、湯河原の旧赤線が目と鼻の先だった。バスでないと移動できない距離。今から行くには日が暮れすぎた。つくづくタイミングが悪いと正月旅行の難しさを痛感した。
しかし、トホホな気分も次の最終目的地である晩ご飯が帳消しにしてくれるだろう、きっと! 行くぜベイベー!!

次は最終回

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前回の続き

古屋旅館から3分と歩かずに目的地に着いた。着いた瞬間、不思議なもので10年前の記憶が蘇ってくるものだ。
ここに至るまで実は不安で仕方なかった。前回の熱海行で立ち寄った温泉は2箇所。一つは有名な駅前温泉でちょっと広い家風呂ほどのスペースに客がごった返しゆっくりできなかった。もう一つは鄙びた雰囲気で地元客が銭湯代わりに利用するという触れ込みで立ち寄ったが、昔からの温泉場という雰囲気満点で、窓越しに昼間の日差しを浴びながらの入浴は贅沢この上なかった。是非とも再訪せねば!となったのだが、しかしどうにも名前を失念してしまい、調べてアタリはつけたものの、実物を目の前にするまで自信がなかったのだ。

福島屋旅館外観福島屋旅館
最寄駅:熱海
熱海市銀座町14-34
10:00〜19:00(要時間確認)
採点:★★★★★
一人当たりの支払額(税込み):350円
参照サイト:立ち寄り温泉みしゅらん


名前のように小体ながら旅館然とした佇まいで、引き戸を開けると歳月を経た木の微かな臭いが出迎えてくれた。
入口左手が帳場になっていて、この瞬間、完全に10年前の記憶と合致した。帳場の小さな窓の奥には旧式の石油ストーブが焚かれ、座布団に腰掛けたおねぇさんが不意をつれたようにハッと自分に気づき、入浴料¥350と貴重品を渡した。
脱衣場@福島屋旅館軋む廊下を経てすぐ男湯。脱衣場がこれまたスゴイ。床はベコベコ。ロッカーなどなく籐で編んだろうカゴ。先客は地元の方と思しきジイさまとオッサンが数名。そういえばここをネットで調べた際、店側はもっと観光客にも利用して欲しいといっていたが、相当マニアな客が終結しない限り、今日的な温泉施設になれた観光客にはハードルが高いだろう。とはいえ不潔というのとは違うのだが、イメージというのは難しいものである。
中に入ると大き目の湯船が階段を数段下りたところに一つ。少々きついが10人は入れそうな広さ。もう一つ小さな湯船があるがこちらは空。洗い場は2つあるが、一つは湯が出っぱなしになっていて大きな桶に溜められている。ジイさまがその桶から湯を掬い身体を流している。自分ももう一つの蛇口の前で身体を洗おうとしたが、蛇口からはちょろちょろしかお湯が出ない。だから湯が溜めてあるのか。

苦心してなんとか身体を洗い湯船へ。
湯船@福島屋旅館
前回は湯を入れ替えたばかりということで相当熱かったが、今回はやや温めでちょうどいい。熱海の温泉は無色透明に近いというが、ここのは若干の濁りがある。透明な湯に湯ノ花が浮ぶ様を薄目を開けてでボカしてみる程の濁りではあるが。微かに温泉らしい臭いも感じられなくもないが、なんといってもインパクトあるのはぬめりだろう。とにかく重くしっかりしたぬめりなのだ。黒湯のぬめりともまた違うぬめりで、湯の塩っ辛い味を体現しているような濃さだ。
無色透明の湯でここまで満足度の高い湯がこの鄙びた空間で手軽に体感できる喜びったらもう! 確か入口の張り紙に源泉100%と謳われていたが、これが源泉100%じゃなくてなにが100%かと思ってしまうほど。すぐ横の風呂の湯という源泉から汲み上げているという。他の旅館などの湯もこうした熱海の町中に点在する源泉から汲み上げているはずだが、どうもここまで濃い湯は熱海でもそうそうないとの噂。どういうことなのだろう。
温泉は、その湯を感じる空間、とりわけ野外で頭を冷たい外気に晒しながらというのが湯を楽しむための最重要課題だと思っていた。だからなるべく温泉で露天という施設を重点的に周って来たが、こういう湯に出会うとシチュエーションはどうでもいいような気さえしてくる。まぁこの建物そのものが最高のロケーションではあるのだが、最近いい湯を感じる機会が増え、考え方が変わってきた気がしている。

ツルツルポカポカの身体をそのままに、脱衣場でダラダラと着替える。
福島屋旅館階段下男湯を出たところに、入ってきたときには逆向きになるので気づかなかったが、2Fへ上がる階段があった。ここから2Fを見上げると古い旅館建築のつくり・意匠の特徴がはっきりと感じられる。歳月で黒光りする木とやや変色した白い壁とのコントラスト。軋む床の音をBGMになんとも贅沢な時間が流れている。
この旅館、とっくに廃業し浴室だけを公衆浴場として開放しているのかと思い込んでいたが、どうも宵の口までを外来も入れるようにしているだけで、旅館業も未だ営んでいるという情報も伺えた。今現在はどうなのか、この佇まいからは全く想像できないが、出来ることなら泊まってみたい。

身も心も満たされ、さぁいよいよ熱海市街地散策へと向かうとしよう!

続く

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